・どんなときに歯並びの矯正するのか?
現代人のアゴは確実に小さくなっています。縄文・弥生時代の頭骨を見ると、実に頑丈で立派なアゴをしています。虫歯も殆ど見られません。しかし、人類が火を使い、食べ物を柔らかくして食べるようになってアゴが細く小さく変わっていったようです。
現代人の食生活は柔らかい食べものが多くなり、咬まないようになったため、さらにアゴ骨が細く退化したようです。しかし、歯の大きさは昔と殆ど変わりません。全部の歯がアゴの中にきちんと並びきれずにはみ出し歯並び異常を起こしているのです。
歯並びが悪く、上下の歯がきちんと咬み合ってない時に、ちゃんと食物がかみ砕けないとか、発音ができない、顎関節症に異常があるなどの場合には矯正をする必要があります。
・どんな悪い歯並びがあるの?
乱ぐい歯
アゴが小さくて歯がはえる場所が狭く、歯並びがデコボコしている場合をいう。あごの骨には異常はなく、歯だけに異常がある場合です。これがひどくなると、歯が歯列からはみ出して犬歯のような八重歯となります。このような噛み合わせが日本人に一番多いのです。
受け口
下の歯が上の歯よりも前にでている咬み合わせをいいます。上下の歯だけが反対の咬み合わせで起こる(歯だけに問題)場合と、下アゴの骨が長すぎて上下のアゴや咬み合わせにズレが生じる下顎前突(骨に問題)の2種類あります。
出っ歯
別名、上顎前突と言って、これにも2種類ある。上アゴの前歯が前方にでている(歯だけに異常がある)場合と、上アゴの骨の異常で前にでている場合とがある。日本人には、上アゴの前歯(歯だけ)の異常のケースが多くみられます。
開咬
上下の歯でしかっり咬み合わせても、前歯や側面の歯が咬み合わず、すき間が空いて舌などが見える状態を言います。大臼歯だけ咬んで、後はまったく咬んでいない人もまれにみられます。
・いつから矯正をするの?
1.乱ぐい歯
一般的には、第2大臼歯以外の永久歯がはえ揃う小学校高学年頃から行うのが良いでしょう。
2.受け口
遺伝的傾向の有無にもよりますが、骨の形成をも考慮して遅くとも3~4歳くらいにから行います。近所に3~4歳の子供さんを見かけたら、一言「今が矯正の大切な時期ですよ!」と言ってあげてください。
3.出っ歯
日本人の場合、骨の異常で起こる場合は少なく、乱ぐい歯食いと同じ時期である小学校高学年頃から行うのが良いでしょう。
4.開咬
舌突き出し癖など悪習癖によって起こることが多いので、一般に早期に開咬傾向がわかったらすぐに治療を開始するのがよいでしょう。
・矯正治療期間はどのくらい?
(あくまでも一般的です。個人によっても大きく差があります。)
<乱ぐい歯や開咬>
一般に2~3年以上くらいかかるようです。
<受け口>
骨の異常が原因の場合は5-8年、場合によっては10年くらいかかることもあるでしょう。歯だけの異常では乱ぐい歯と同じ2~3年くらいかかります。
<出っ歯>
歯だけの異常では2~3年、骨の異常では4~5年くらいかかるでしょう。
<開 咬>
歯だけの異常では1~2年、骨の異常では4~5年くらいかかるでしょう。矯正治療が終わったら、約1年くらいは ”後もどり装置”を口の中に入れておかなければなりません。
・矯正の治療費について?
大学病院の標準的な矯正治療では、初診料、検査料、診断料、基本料金など合計して60万円くらいかかります。また、別に月々6000円の調整料金がかかります。開業医ではもう少しかかるようです。よく「矯正治療費が高い」と言われる事がありますが、決して高くはありません。長い矯正治療期間中、患者さんの治療に対し責任を持つわけですから、Drとしては神経の使い用は大変なものです。それを考慮して頂きたいと思います。
参考ですが、アメリカでは、軽く100万円以上かかるようです。
・矯正中の注意について
矯正治療中、口の中に装置が複雑に入っていますので、歯垢の付着や、食べ物の停滞をきたし易く、虫歯や歯肉炎を起こしやすくなります。期間中は念入りに歯の手入れを行いましょう。
また、フッ素洗口(フッ素のぶくぶくうがい)やシーラントなど予防処置を行いましょう。歯科医院で歯科衛生士による専門の指導を受けましょう。